「池田理代子さまと新大久保での忘れられぬ思い出」

昨年の年末に知人から「会って欲しい女性がいるので時間を作ってくれないか」との電話が入りました。

彼は映画監督をしていますが、スカウト能力に優れていて、これまでに何人ものAV出演の女性を紹介してきたことがあります。

それらの女性はことごとくトビッキリの美形揃いでした。

よくもこんな上質な女性を次から次へとスカウトできるものだ、と彼のスカウト能力に舌を巻いていました。

映画監督としてはさしたる業績のない彼ですが(本人はそんなことはないと怒るに違いありませんが)人材発掘能力にかけては彼の右に出る人間はいないと評価しています。

その彼から久しぶりに「会って欲しい女性がいる」との連絡が入ったのです。

彼の自信タップリな物言いに、余程の女性なのだろう、と期待が膨らみました。

ちょうど、浅草に行く予定がありましたので、その折に会う時間を設定しました。

待ち合わせの時間は午後3時でしたが、午後2時になって、彼から「紹介する予定だった女性が風邪をひいてしまったので別の日にして欲しい」との電話が入りました。

風邪をひいたということであれば仕方がありません。

せっかくでしたが、またの機会にすることにしました。

翌日のことです。彼から電話があり「彼女の風邪が治ったので、できるだけ早い機会に会ってくれないだろうか」と言うのです。

これほどまでに彼がヤル気を見せているのは珍しいことでした。

それほど熱心なら、と逆にこちらの方が是非とも会ってみたいという気持ちになりました。

不思議なものです。ニンジンを目の前にぶら下げ続けられると、とめどもなくヨダレを流してとどまるところを知らない馬のごときとなったのでございます。

大晦日の31日の午後2時に都心の喫茶店で会う約束をしました。

約束より1時間前の午後1時に、約束の喫茶店に入りました。これまで待ち合わせて約束の時間より20分程前、ということはありましたが、1時間も前に行ったのは初めてでした。

それだけ期待が膨らんでいた、といってもいいかもしれません。

いつもは賑わっている喫茶店ですが、大晦日のその日は店内は閑散としていてお客の姿もまばらでした。

待ち合わせの時間がくるまでの1時間を、どんな娘がやってくるのだろうか、と想像を巡らせていました。

これまで彼から紹介を受けてAV撮影をしてきた女性たちをアレコレ思い出して、今日くる女性はどのタイプだろうと妄想していたのです。

手前どもにはとりたてて得意技といったものはありませんが、唯一あるといえば「妄想癖」でございます。

この「妄想癖」は小学生の子供の頃からのもので、日曜日なのに雨が降っていて外に出て遊べない日などは、朝から夜まで家の中で色々と妄想をして飽きることはありませんでした。

小学生の子供の頃のことですからもちろん色恋沙汰の妄想ではありません。

自分が戦国武将になったり、アフリカのジャングルでターザンになったり、戦争で無敵の戦士になって敵を殲滅する、といった他愛もない夢物語を頭の中で描いて過ごしました。

自分が英雄豪傑になって活躍する姿に酔いしれ、妄想は膨らむばかりでした。

朝の8時から昼が過ぎ夕方となり、睡眠をとる時間の夜8時近くになるまでの12時間、部屋の隅でブツブツと独り言を言って妄想の世界に没頭する手前どもを見て、母親は「なんだい、このガキは一日中独り言を言っているなんて、頭がヘンにでもなったんじゃないか」と気色の悪いモノを見るような目で眺めるのでした。

子供が一人遊びで妄想の世界で遊ぶということは、決して脳の発達にマイナスになるものではありません。

それどころか、想像する力は…

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