「西部さまの自殺と小室さまへのエール」

ダイソーの矢野博丈社長を久しぶりに、矢野社長を紹介するテレビ番組で拝見いたしました。

手前どもがお会いしたのは今から20年ほど前のことです。

あの頃の矢野社長は、まだ54歳の若さでした。20年後に久しぶりにテレビでお顔を拝見して、少しもお変わりなく感じました。

矢野社長のお顔の特徴が年齢を感じさせないものをお持ちであると同時に、74歳になった今も第一線でご活躍されているからなのでしょう。

テレビでは若い社員にまじって、倉庫で荷物の発送の力仕事をなされている姿が映し出されていました。

現役で最前線の力仕事をなされる姿に感動しました。

矢野社長との出会いは突然でした。

20年程前、何の前触れもなく手前どもの事務所を訪ねて来られたのです。

共通の知人である男から私のことを聞いて事務所の場所を知り、やって来られたのです。

名刺を交換してはじめて、事務所に来られた男性が、あの100円ショップで有名な「ダイソー」の社長であることを知り、驚きました。

目の前にいるご本人は、どこにでもいる普通のおじさま(矢野社長、失礼をお許しください)にしか見えなかったからです。

矢野社長は、事務所に入るなり早速用件を切り出されました。

手前どもの作品を「ダイソー」で販売したい、と申されたのです。

作品はその頃流行し始めていた「ビデオCD(VCD)」にして売りたい、とのご要望でした。

それも新しく撮り下ろすのではなく、これまで製作した作品の中から選んで20タイトルほどを発売したい、とのご意向です。

枚数は各13万枚ずつ、合計260万枚の注文の商談です。

矢野社長の唐突の提案に面食らいました。いかにビデオCDとはいえ260万枚の発注は、これまで経験したこともない膨大なものだったからです。

しかしメリットはありました。

計算すると、卸し価格から1枚10円の粗利を得ても2600万円の収入を得ることができるからです。

倒産して借金払いに追われる日が続いていました。手元不如意でした。

2600万円のお金を喉から手が出るほどに欲しい、と思いました。

しかし、この商談を成立させるには、越えなければならない山がありました。

ビデオCDを製作して「ダイソー」に納品するにしても、それを製作するのに必要な資金が手元にありませんでした。

ビデオCD製造メーカーに依頼しようにも、倒産してから6年程しか経っておらず、現金なしでは引き受けてもらうことはできない、と考えたのです。

「折角のいいお話をいただいたのですが、私にはご注文をお受けして納品させていただくだけの資金がありません」と正直にお話をしてお断りしました。

2600万円が泡となって消えてしまうのかと思うと断腸の思いでしたが、仕方がありません。

矢野社長は事務所の中をグルリと見渡しました。狭い事務所でした。編集機のセットの他に机が一つと応接セット一つだけがある部屋です。

床に敷かれた絨毯のところどころには大きな穴があいています。

事務所の棚にはこれまで撮影した2000本近くの収録済みのソニーのベーカムテープが並んでいました。

その棚のテープ群を眺めながら、矢野社長は「これは監督さんが全部お撮りになったものですか?」と尋ねられました。

「はい、そうです。編集前の、ビデオカメラで収録しただけのテープです。ご覧になってみますか」と言うと、「編集前のテープなんて、どんなものが映っているんでしょうか」と目を輝かせました。

矢野社長はとても好奇心が旺盛でした。

テープを1本取り出して編集機にかけてモニターに映し出しました。

SEXシーンの結合のアップがモニターの画面いっぱいに映っています。

「ありゃ、こんなにはっきり映っているんですか」と驚いた声を出されて、「いや、いや、もう結構です。これ以上見ると体に悪い」と両目を両の掌で塞がれたのです。

その、恥ずかしがり屋で子供のようなしぐさが、矢野社長の人柄を表していて好印象を持ちました。

普通、修正前のSEXのモロ出し映像を見ると、言葉もなくただ黙って見入ってしまうものですが、矢野社長は違いました。

時間にして10秒もなかったと思います。「もう結構です」と言って、座られていた応接セットのソファに戻られたのです。

「いやぁ、凄いものを拝見させていただきました。監督さんは大変な財産を持っていらっしゃるんですね」と言いながら、事務所の片側の棚一面を埋めている撮りテープを眺められたのです。

しかしその目は凡庸なものではありませんでした。

それまで一度も見せることのなかった鋭く輝くものが見てとれたのです。

「お金のことなら心配ありません。製造に必要な費用は私の方から前渡し金をお支払いいたします。普通は納品していただいてから210日の、俗にいう”台風手形”でお願いしているのですが、結構なものをお見せいただいたお礼に前金でお支払いいたします」とおっしゃるのです。

こんなボロ事務所の佇まいで落ち武者のような生活を送っている人間に260万枚のビデオCDの代金を前金で払うなんて、と我が事ながら信じられない思いでした。

しかし、それから1週間後…

この続きは「まぐまぐ!」でお読みください...
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