「代々木忠監督との再会」

夏、盆踊り大会のシーズンがやって来ました。

住んでいるマンションの町内会でも近くの小学校の校庭にやぐらを組み、盆踊り大会が開催されました。

先週の金、土曜日の2日間でしたが、校庭には沢山の提灯が飾られ、やって来た浴衣姿の踊り客で賑わいを見せていました。

が、惜しむらくは、人々の顔に、お祭りにつきものの、あの弾けた笑顔が見られなかったことです。

なにが盛り上がりを欠かせたのでしょうか。

まず第一にお祭りにつきものの飲み食いの屋台が出なかったことです。

盆踊り会場の入り口には長机が並べられ、町内会の役員がズラリと10人近く雁首をそろえて受け付けを行っていました。

選挙の投票でもあるまいし、そんな仏頂面をして椅子に座っていてもせっかくの祭りの趣の雰囲気が削がれるだけで、何の意味もないのでございます。

選挙の投票でもあるまいし、なんで盆踊り大会にまで机を持ち出して受け付けをしなければならないのか、とその小市民根性に腹立たしい思いをしたものでございます。

特に気に障ったのは会場が飲食禁止となっていたことです。

年に一度の夏祭りなのですから、有志が焼き鳥や焼きそば、イカ焼きの屋台などを出して、何故盛り上げることができなかったのでありましょうか。

飲食禁止といっても、ビールの1本や2本を飲ませる鷹揚さがあってもいいものを、と、もしものことがあったら、を恐れるばかりの自主規制の厳しさにゲンナリ致しました。

ただ音楽に合わせて踊ってみてもなにが楽しいのか、というのでございます。

ゆく夏を惜しみつつも、子供たちに都会の盆踊りの楽しさを味わわせてやろうという情熱が、大人たちに欠けているがために、盆踊り大会をお通夜のようにしてしまっているのでございました。

盆踊り大会は8時になりますと、それまでスピーカーから聞こえてきていた笛や太鼓の音がピタリと止み、「終了」となりました。

午後8時などといっても、まだ宵の口でございます。さあ、これからだ、とようやくエンジンがかかってきた頃に「終了」となったのでございます。

大都会に住むということは、せっかくの一年に一度の夏祭りの盆踊りをかくもみすぼらしくしてしまうことを寛容しなければならないのでしょうか。

せめて子供たちの残り少ない夏休みの想い出に、金魚すくいやヨーヨーすくい、リンゴ飴の屋台を出してやっても罰が当たらないだろう、と苛立ったのでございます。

他人のためにお役に立つことはまっぴらごめんで、自分だけが得をすればいいという都会人のエゴイズムが、祭りの楽しみを奪い、台無しにしてしまっているのでございます。

が、東京の祭りの全部がかくのごとき味気ないものとなっているわけではないのはいうまでもないことです。

高円寺で開かれる恒例の阿波おどりなどは、本場徳島の阿波おどりが今年は不満足になっていることをよそに、今年も盛況となっております。

町内会の盆踊り会場に「ドンドンパンパンドンパンパン」の懐かしい盆踊りの曲が流れておりました。

「うちのオヤジはハゲ頭、隣のオヤジもハゲ頭、ハゲとハゲがケンカしてどちらもけがなく良かったね」

最近ではパワハラとお叱りを受けかねない歌詞でございますが、老若男女の踊り子たちが、口々にこの歌詞を口ずさみながら踊られていたのは何よりでございました。

手前どもの故郷、福島県いわき市の盆踊りはそれは町をあげてのお祭りとなって大盛況でした。

「ウチのオヤジはハゲ頭」のフレーズを遠くに聞きながら、高校時代、神社の境内に付き合っていた女子高校生の女友達を連れ込み、浴衣の足の付け根をはだけながら、そこに頭を突っ込み、生い茂るジャングルに荒々しく舌を這わせていた若き日を思い出しました。

あの時代の盆踊りは、日頃から狙いをつけていた女性を近くの河原や林の茂み、神社の境内に連れ込み、イタしたい放題にイタすのが夏の風物詩だったのです。

手前どもも、どういうわけか盆踊り大会の夜には、お相手女性に不足することなく、いわば酒池肉林の饗宴に時を忘れたものでございます。

今日のようにカラオケボックス、レジャー施設などの遊び場はなく、盛りのついた若い男と女が出会えば、行きつく先は野外の暗がりを求めての、それぞれの秘密基地しかなかったのでございます。

その夜のために、ある者はあらかじめ林の中にゴザを敷き、しかるべき場所の構築に余念がなかったのでございます。

ラブホテルなど調法な場所が姿も形もなかった時代でございます。

手前どもが利用したのは我が家の庭に工事現場で拾ってきた材木で建てた3畳ほどの掘ったて小屋でございました。

田舎のことです。夜8時を過ぎると聞こえてくるのは虫の鳴き声だけでございます。

母屋の祖母や母親に気付かれないように、相手の女性を背負い、掘ったて小屋に引き入れておりました。

足音を一つにして、2人で小屋に入るのをバレないように相手の女性をおんぶしたのでございます。

田舎の夜の静寂さは、針が1本落ちても分かるほどでございます。

女性を背負いながら、足音がいつになくノシ、ノシと重く響いているのでは、と肝を冷やしたものでございます。

あの若い時代は朝から晩までそのことばかりが頭から離れず、どうにかなってしまうほどに欲しがっていました。

相手女性とは一晩に5回交わるのが普通でした。

町内会の小学校の校庭で繰り広げられる、健全な盆踊り大会を拝見しながら、遠き夏の日の盛りのついた野犬のごとき己を眩しく思い出した、先週の土曜の夜でございます。

アジア大会が開催されました。

体操男子種目別あん馬競技で…

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